短期投資で投資をする場合と中長期投資で投資をする時では、損切りに関する考え方が同じではいけません。短期投資とは、短期間の保有で小さなリターンを重ねていく手法です。リターンが小さい分、リスクも小さく――という状態が理想です。ですから「リスクを小さく抑え、リターンも小さく得る」という考え方になります。
しかし、中長期投資というのは、そういう考えでは行いません。もちろん、ただ「長く保有すれば良い」というのが中長期投資の戦略ではありません。長く保有し、その分大きくリターンを得るということなのです。ですから、「短期投資のように小幅な利益を積み重ねる手法と比べ、比較的リターンを大きく得るための手法」ということが言えるでしょう。
何年もの間、塩漬けしてしまった株を持っていることを中長期投資戦略と呼ぶわけではないのです。これは、あらかじめ「塩漬けするぞ!」と決めて中長期保有してしまったわけではないですね。たまたまそうなってしまっただけです。投資戦略というのは、銘柄を決める前に「どういうスタンスで相場に臨もうか」と考えるわけですから、違うということはおわかりいただけるのではないでしょうか。
さて、あなたの投資スタンスが短期か中長期か決まれば、損切りラインもどれくらいが適切なのか考えることができるでしょう。短期投資は、小さな株価の動きを捉えるわけですから、小さな損が命取りになります。ですが、中長期戦略の時に「小さな損でも損切りしなければならない」となると、その後にくる大きな波に乗れないことになります。
例えば、5405 住友金属工業を2002年の10月に 40円台で買ったとしましょう。その後11月に安値36円をつけています。短期投資なら、1割下がれば損切りという戦略かもしれません。
しかし中長期投資の場合はどうでしょうか。1割の下げで損切りしてしまった場合、その後2007年に771円という株価まで保有する権利を失ったことになります。この銘柄は40円台で買った場合、幸いにも1割程度の下げに見舞われるだけであとは上昇を続けましたが、1割以上下げる銘柄もあるでしょう。
しかし、いくら下げても損切りを行わないというのは非常に危険な行為です。あなたが「中長期投資」と思っていても、例えばそれが上場廃止をした日本航空のような銘柄であれば、紙切れとなってしまいます。どこかで見切りをつけなければなりません。「損切りラインはここです」と、簡単に割り出せるものではありません。あなたの投資スタンスに加え、その銘柄の業績情報や株価の推移(トレンド)を把握しながら、損切りラインを考えていく必要があるからです。
損切りは難しい判断が求められますが、リスクを軽減するためにも、投資を行う際には、必ず覚悟しておかないといけないものです。
(2010/4/9掲載)